目次
ことわざ「急がば回れ」の読み方
「いそがば まわれ」と読みます。
「急がば回れ」の意味
そのまま現代の言葉に直すと、「急ぐならば回りなさい」になります。
それは、
「危険がある近道よりも、遠回りでも安全な道を選んだ方が、早く目的地に着く」
という意味です。
道だけのことではなく、
「難しいが成功すれば短時間でできる方法よりも、時間はかかるが安定した簡単な方法でやった方が結局早くできる」
というような、いろいろなことにあてはまることわざです。
「急がば回れ」の由来
室町時代の連歌師(れんがし)の宗長(そうちょう)という人がうたった
「もののふの 矢橋(やばせ)の船は速けれど 急がば回れ 瀬田の長橋」
といううたが「急がば回れ」の始まりです。
「もののふの」は矢にかかる枕詞です。八十・五十などもかかります。
「矢橋の船」とは、東海道の草津宿から大津を結んだ琵琶湖上の船です。もちろん、現在の滋賀県にあります。
また、「瀬田の長橋」とは「瀬田の唐橋」のことで、日本三大名橋のひとつにあげられています。
つまりこのうたは「矢橋の船は速いけれど、急ぐならば回れ、瀬田の唐橋まで」というような意味になります。
草津宿から京都へ向かうには、矢橋から琵琶湖を横断する船を利用する方が、瀬田の唐橋経由の陸路よりも距離が短く、移動時間も短いのです。しかし、船で湖を移動するこのルートは、比良(ひら)おろしという、比叡山(ひえいざん)から吹き下ろされる突風などにより大変危険だったとのことです。
そんなことからうたわれたのがこの歌のようです。
「急がば回れ」に関する具体的な場所、琵琶湖
地図を使ってその場所を見てみましょう。
現在の滋賀県にある琵琶湖の南側になります。
上の地図のAルートのように東海道を草津宿から大津まで行くのに、矢橋から船で向かうとほぼ一直線で移動できますが、Bルートのように瀬田の唐橋経由で行くと遠回りになります。
その差は、実際の道すじや計測時の条件にもよりますが、近道のAルートが水路を含めて7キロメートルほど、遠回りのBルートが13キロメートルほどです。
およそ倍の道のりがあります。
ただし、船で移動する場合、北西から比良おろしの突風が船を転覆させることがあるため、大変危険な上、かえって時間がかかることがあるようでした。
宗長(そうちょう)とは何者か?
宗長は1448年に駿河国島田(現在の静岡県島田市)で鍛冶職五条義助の子として生まれました。
子供の頃から今川義忠(いまがわよしただ)のもとではたらいていたとのことです。
あるとき、義忠の指示で、京都から来ていた宗祇(そうぎ)という連歌師を清見が関という名所に案内しました。これが運命の出会いだったようです。
その後、義忠が戦死したことにより今川家内で争いが起こります。
駿河を去り京都に行った宗長は、宗祇に師事して連歌を学び、水無瀬三吟百韻、湯山三吟百韻などに参加します。
大徳寺の一休宗純のもとで禅の修行も行いました。一休宗純はあの一休さんのことです。
ふたたび、今川家の氏親(うじちか)に仕えますが、文亀元年(1501年)、越後にいる宗祇のもとへ行き、東国の旅について行きます。しかし、その翌年に、宗祇は箱根湯本で倒れてしまいました。
師匠である宗祇がなくなった後は宗長が連歌界の指導者になります。
宗長は駿河にもどりました。1504年駿河国丸子の郷泉谷に柴屋軒(さいおくけん・現在の吐月峰柴屋寺)を立てて、京都との間を行ったり来たりして、さまざまな文化的なことに参加します。
また、今川氏親の側近として、いくつもの戦いについて行きました。足利義稙の将軍への復帰についても、幕府への工作に宗長が関わっていた可能性が高いと言われています。政治的なことにも影響を与えた人物だったようです。
代表作として、句集「那智篭(なちごもり)」、日記「宗長手記(そうちょうしゅき)」などがあります。
連歌とは何か?
五・七・五・七・七の和歌形式があります。百人一首などで使われているものです。これをふたり以上が応答してよむものを連歌といいます。
連歌には短連歌(たんれんが)と長連歌(ちょうれんが)があります。
短連歌は五・七・五の上の句と、七・七の下の句を、別人がよむ形で行なわれるもので、一句連歌ともいわれています。
長連歌は五・七・五の上の句と、七・七の下の句を、数人で交互にと鎖のように詠み続けるもので、鎖連歌ともいわれています。
平安時代のころは短連歌が行なわれていました。12世紀半ばごろから、上の句と下の句を交互につらねてゆく長連歌に発達していきます。
「急がば回れ」の例文・使い方
意味を考えると、「性急に物事を行うよりも、堅実な方がよい」というような文になります。
- 怪我をしたばかりだから、急がば回れで、無理をせずに練習を控え、回復に専念しよう。
- 急がば回れというように、一発逆転を考えずに地道に生きていきたい。
- 普段つかっている道をはずれて近道しようとしたら、細い道ばかりでかえって時間がかかったよ。やはり、急がば回れだね。
「急がば回れ」ど同じ意味のことわざ
「急がば回れ」と同じ意味を持つことわざは以下のようなものがあります。
- 急いては事を仕損じる
- あわてるこじきはもらいが少ない
- 短気は損気
「急がば回れ」を英語にすると
そのまま翻訳すると、
- Turn around if you hurry. 急いでいるなら、向きを変えなさい。
になります。
「急がば回れ」と同様の英語表現は、
- Make haste slowly. ゆっくり急ぎなさい。
- More haste, less speed. 急ぐほどスピードは落ちます。
- Haste makes waste. 急ぐと無駄がでます。
などがあります。
ことわざ「急がば回れ」の由来や場所まとめ
いかがでしたでしょうか?
「急がば回れ」の由来や場所についての説明でした。
勉強においても、たとえば、テキストをやり終えるために最短時間でする方法をとるのではなく、そのテキストを使ってしっかりと学習し、身につけられるように工夫ができると良いですね。
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