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少にして学べば、即ち壮にして為すことあり~佐藤一斎~

~人は学ぶことをやめた時、衰え朽ち始める~

「少にして学べば、即ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、即ち老いて衰えず。老いて学べば、即ち死して朽ちず」

小泉純一郎元首相が佐藤一斎のこの言葉を使った時、日本人の多くにさわやかな感動が広がった。私たちが忘れかけていた学問の大切さ、教育の意義を再認識させてくれた。また同時に、人間として生きる上で志を持って学びつづけることの重要性を、簡潔明瞭に教えてくれた。

この言葉は、美濃の国(現在の岐阜県)岩村藩の出身である佐藤一斎が、その著「言志四録」の中で書いたものである。「子供のころにしっかりと勉強しておけば、大人になってから社会にとって重要な仕事をすることが出来る。大人になってからも学び続ければ、老年になってもその力は衰えることがない。老年になってなお学ぶことをやめなければ、死んだ後も自分の社会への役立ちは次代の人々によって引き継がれていく」という意味である。なんと素晴らしい言葉であろうか。人は誰でも生まれて、いつかは死んでゆく。時々、ふと「自分が人間として生きる意味は何だろう」と迷うこともある。しだいに年を重ねるにつれ、自分の気力や能力の衰えに悩むこともある。そんな私たちに、佐藤一斎のこの言葉は力強い勇気を与えてくれる。年齢にかかわらず謙虚に学びながら自分を高め、そうして培った力で世のため、人のために生涯役立ち続けていく、これが人間として生きる意味ではないだろうか。

佐藤一斎は、安永元年(一七七二年)に江戸にあった岩村藩の藩邸で生まれた。

幼い頃より読書を好み、武術にも励んだ。そのかいあって、十三歳の頃には大いに頭角をあらわし、成人と同じような扱いを受けていたという。いつしか天下第一等の人物になろうと志し、京都や長崎に旅して学びつづけた。やがて、その学識、人となりを高く評価され、幕府の昌平坂学問所の儒官となった。今で言えば、東京大学の総長の立場である。「一言志四録」は、佐藤一斎が四十二歳の時に書き始め、八十二歳に至るまで書き続けた一一三三条からなる語録である。最後に書いた「言志燾」の巻頭で、「自分は今年八十歳になったが、まだ耳も目もひどく衰えるまでには至っていない。なんと幸いなことであろうか。一息でもある限り、自分は学業をやめるべきではない」と書いている。

佐藤一斎の門に学んだ者は数千人を超える。弟子、孫弟子の中には、佐久間象山、勝海舟、坂本竜馬、吉田松陰、高杉晋作、木戸孝允、伊藤博文、西郷隆盛などがいる。明治維新を支えた人物たちに、大いなる思想的影響を与えたのである。そしてまた、彼の死後百四十年以上たった今日でも、日本のリーダーたちに大きな影響を与え続けている。まさしく、一斎は「老いて学べば、すなわち死して朽ちず」を実践した人と言える。私たちの郷土から、このような素晴らしい人物が出たということを誇りに思う。と同時に、いつの時代にも変わらぬ価値を持つこの言葉をしっかりと噛みしめ、私たちの生き方を通してその尊い教えを実践していかなくてはならない。人は学ぶことをやめた時、衰え朽ち始める。たとえ若くてもそうであろう。しかし、学びつづける限り、いくつになっても「成長と感動」を自分の人生の友としていくことが出来るに違いない。

岐阜県、可児、西可児、多治見、多治見北、美濃加茂、土岐、瑞浪、関、各務原の学習塾
東進ゼミナール 学長 飯田陸三著 「何のために学ぶか」より

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