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夢を持って生きる!砂漠に緑を

2018年04月01日[学長メッセージ]

~一人の夢が多くの人の夢を育てる 向後元彦さんのこと~

 

 

地球の砂漠化が猛烈に進行している。国連環境計画(UNEP)によれば、毎年、全地球で六百万ヘクタールの土地が砂漠化しているそうだ。これは九州と四国を合わせた面積にほぼ等しい。その結果、現在地球の陸地の四分の一にあたる三十六億ヘクタールが農業に適さない砂漠となっている。そのため、なんと九億人の人々が飢えに苦しんでいるという。このまま砂漠化がすすめば、さらに多くの人が食糧難に陥ることとなる。皆さんもテレビや新聞で、栄養失調になって骨と皮ばかりとなった子供たちの姿を見て涙を流されたことがあるだろう。地球の砂漠化はなんとしてもくいとめなくてはならない。

 

 

「砂漠に緑を」代表の向後元彦さんは、砂漠にマングローブを植えて緑の地にしようと立ち上がった。マングローブは、熱帯から亜熱帯にかけての潮間帯で育つ樹木だ。潮間帯というのは、満潮の時には海水におおわれ、干潮の時には干上がってしまう場所のことである。マングローブはタコの足のような根を張って育つ。この無数に伸びた根っこの下には、カニやエビ、たくさんの魚が住み着き、豊かな漁業資源を供給している。枯れて落ちる葉は、あたりの土壌を栄養に富んだものにする。林の中には小鳥や小動物が住み着き、動物の宝庫となっている。さらに、海岸に繁茂したマングローブ林は波の侵食から大地を守っている。マングローブ地帯に住む人々は、豊かな食糧に恵まれ飢えを知らない。

 

 

向後さんは、どこまでも砂丘ばかりが続くアラビア半島の海岸にマングローブを植えて、砂漠を緑の地に変えようと計画した。なぜマングローブでなくてはいけなかったのか。砂漠には水がない。水がなければ樹木は育たない。ここが向後さんの素晴らしい着眼点だが、マングローブは海水でも育つのだ。乏しい資金と劣悪な環境の中で、彼は砂と岩だらけの海岸にマングローブを一本、また一本と植えていった。しかし、海水の塩分濃度が高いためになかなか育ってくれない。摂氏十度を切る冬の寒さで、せっかく伸びた木も枯れてしまう。土壌はアルカリ性が強く、栄養分が乏しすぎる。小さな苗は波で流されてしまう。失敗、また失敗の連続であった。だが、彼はあきらめなかった。なぜか。砂漠を緑の大地にしたいという大きな夢があり、彼を支えてくれるたくさんの仲間たちがいたからである。地球の砂漠化を食い止め、人々に美しく豊かな自然を提供したいという思いが、想像を絶する困難を乗り越えさせたのである。

 

 

今では、向後元彦さんの努力が実り、カフジとアブダビのムバラス島に三万本のマングローブが育っている。彼の努力の成果を見て、砂漠の国の人々も自分たちの手でマングローブを植え始めた。今、向後さんの夢はさらに大きく広がっている。実は、マングローブ林は地球全体でみると、過去三十年間に半分以下に減ってしまった。マングローブ林が切り払われて、エビの養殖池にどんどん変わっているのがその大きな原因である。この養殖池で育てられたエビの大半を日本が輸入している。日本人はエビを食べることで、地球に広がるマングローブの林も食べてしまっているのだ。向後さんは、「マングローブ植林行動計画」を進め世界のマングローブ林を急激な破壊が起こる前の状態に戻そうと活動している。これが実現すれば、どれだけ多くの人が飢えから救われるだろう。どれほど多くの緑が、私たちのかけがえのない地球上に復活するのだろう。私たちも向後さんの熱い志にうたれ、「マングローブ植林行動計画」の会員となった。

 

 

夢を持って生きることは素晴らしい。人が見たら常識はずれだと思うような夢でも、その人にとっては大切な夢だ。それが、世のため人のために役立つような夢であれば、なおのこと素晴らしい。一人の夢が多くの人の夢を育てる。皆さんも大きな夢を持ってほしい。その夢を実現する力を身につけるために、勉強に励んでほしい。夢があれば、どんな困難にも耐えられる。生きることが楽しくなる。それを、向後元彦さんは私たちに教えてくれている。

 

 

東進ゼミナール 学長 飯田陸三著 「何のために学ぶか」より